(3月掲載)
Q1 80代の母が、7日前に来訪した事業者から新聞購読の勧誘を受けたと、母と同居する姉から連絡があった。玄関には「訪問販売お断りステッカー」を貼っており、姉は断ったが、販売員が「3カ月間のお試しはどうですか。自分は一人暮らしなので1件でも契約を取らないと生活が苦しい」などと勧誘を続け、同情した母が購読契約に応じて、景品として洗濯用洗剤を渡された。しかし母は新聞を読まないため、新聞購読は必要ないのではないかと母と話し合い、解約することにした。クーリング・オフの方法を知りたい。
(50代 男性)
A 訪問販売による契約は特定商取引法で規制されており、事業者は勧誘に先立ち事業者名や販売目的を告げなければならず、同法で定められた内容を記した契約書面を交付する義務もあります。消費者は書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフをすることができます。また、同法や北海道消費生活条例では、断っている人に対して勧誘を継続することや、後日あらためて勧誘をすることは禁止されています。
北海道消費生活条例では、「訪問販売お断りステッカー」を貼ることは勧誘拒絶の意思表示とみなして、ステッカーを貼っている家に訪問して勧誘を行うことは不当な取引方法として禁止しています。
相談者にはクーリング・オフ通知の書き方について説明し、コピーを取った上で配達記録付きの郵便等で通知するよう助言をしました。また、当センターから事業者に連絡して、勧誘の問題点とクーリング・オフをする旨を伝えたところ、「クーリング・オフとして処理をする。今後の勧誘は控えることにする。景品として渡した洗濯用洗剤は返品しなくても良い。」とのことでした。相談者には、事業者の回答と、引き続き玄関付近に「訪問販売お断りステッカー」を貼っておくよう伝えて相談を終了しました。
なお、新聞公正取引協議会と日本新聞協会が策定した「新聞購読契約に関するガイドライン」では、認知症などで判断力が不足している方が契約したときや「威迫や不実告知など、不適切な勧誘」などにより契約した場合のほか、購読が困難になる病気など考慮すべき事情がある場合は、解約に応じるべきとしています。
クーリング・オフは電子メールなどでも可能に
特定商取引法が改正され、2022年6月1日からクーリング・オフは書面だけではなく、電子メール、FAX、ウェブフォーム等の電磁的記録による通知も行えるようになりました。契約書に具体的な通知方法が記載されている場合は、それらを参照した上での通知となります。送信メールやウェブフォームのスクリーンショットを証拠として保存しておきましょう。
トラブルに遭ったら、速やかに最寄りの消費生活相談窓口に相談を。
賃貸マンションを退去 タバコとペットの臭いで高額な請求が…
(2月掲載)
Q1 6 年間居住した賃貸マンションを退去した際、立ち会った管理会社からタバコとペットの犬による臭いや汚れがあるため修繕費を請求すると言われた。後日、壁と天井のクロス、タイルカーペットの貼り替え代など約40万円を請求されたが、高額で納得できない。 (30代女性)
A 賃貸住宅を退去する際の内装や設備等の原状回復義務については、国土交通省が修繕費用の負担ルールとして「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定めています。
ガイドラインによると、借主の故意・過失による破損の場合は借主負担になりますが、経年変化や通常損耗によるものは、貸主負担と考えられています。ただし、ペットによる傷や汚れ、臭い等は通常の使い方を超えているとして、借主負担で修繕が必要になる場合があります。建物や設備等の価値は時間とともに減少しているため、経過年数を考慮した負担割合の減額について貸主と交渉することは可能と考えられます。
相談者には賃貸借契約書の原状回復に関する記載(ペット可の物件では特約で消毒料などの負担を求められる場合があります)を確認した上で、負担割合を減らしてもらえないか話し合ってはどうかと助言しました。
なお、宅建業法の改正で2022年5 月より、契約時の重要事項説明書は電子交付による提供が可能となりました。この書面には契約内容だけでなく、修繕に関する特約等の重要な事項も記載されていますので、契約前によく確認する必要があります。
トラブルに遭ったら、早急に最寄りの消費生活相談窓口に相談を。
排水管に穴!? 高額な工事契約をやめたい
(2月掲載)
Q1 6 日前に父が、自宅に来た事業者から排水管の高圧洗浄を勧められて1 万円で契約。4日前に洗浄作業をしてもらった後、排水管に穴が開いているので工事が必要と言われ、15万円の工事を契約した。不審に思い、水道局に相談したら、「地盤沈下でも起こらない限り、穴が開くことは考えにくい」と言われた。工事を解約したい。( 40代 女性)
A 訪問販売で排水管の洗浄や工事を契約した場合は、特定商取引法が適用されるため、法律で定められた事項を記載した書面を受け取ってから8 日以内であれば、クーリング・オフができます。
契約当事者である父にその旨を説明し、洗浄作業もクーリング・オフできるので、書面で通知するよう助言しましたが、既に洗浄作業は終わっているので、排水管工事だけ解約したいとのことでした。書面を送付した後、センターからも連絡し、事業者がクーリング・オフに応じたことを確認しました。
このほか、最近では「水道局を名乗る電話でトイレの水漏れを指摘され、派遣された業者に修理代を支払ってしまったが不審」といった相談も寄せられています。自治体が特定の事業者を派遣したり、有料で点検や修理を行ったりすることは考えられません。水道関係で困った場合は、慌てず、自治体の指定工事事業者などを調べて工事の必要性などをよく確認した上で対応しましょう。
簡単にもうかると勧誘され…高額なサポート付転売ビジネスの契約をやめたい
(1月掲載)
Q1 5日前に、インターネット検索した副業紹介サイトに登録し、クレジットカードで登録料の3,000円を決済した。後日、担当者から電話があり、「1日1〜2時間の作業で必ずもうかる」と転売ビジネスを勧められた。「在庫は不要、サポート付きプランなら月7〜8万円稼げる」などと3時間ほど説明され、断り切れずに60万円のプランを契約した。カードと現金振込で50万円を支払い、残り10万円の支払いはいつでも良いと言われた。不安になったので解約を申し出たら、作業をしてからでなければ返金できないと言われ、困っている。(50代 女性)
A インターネット通販等で仕入れた商品をフリマサイト等で販売する「転売ビジネス」に関する相談が全国の消費生活センターに多数寄せられています。 この事例の場合、副業紹介サイトへの登録は特定商取引法の通信販売に該当し、担当者からの電話で勧められた転売ビジネスについては、同法の電話勧誘販売に該当する可能性があると考えられます。電話勧誘販売の場合、事業者は法律で定められた内容を記載した書面を交付する義務があり、消費者は書面を受け取ってから8日間はクーリング・オフ(無条件解約)ができます。
相談者に書面で解約を申し出るよう助言し、センターから事業者に連絡したところ、「本人の要望で電話をしたので電話勧誘販売ではない。クーリング・オフには応じられない」との主張でした。簡単にもうかるなどと勧誘しているのは問題ではないかと伝えて、交渉を重ねたところ、「クレジット決済した40万円分をキャンセルする。残りの10万円は請求しない」と提案がありました。クーリング・オフの場合は、本来全額がキャンセルとなり、支払った分は返金されるものですが、事業者は最後までクーリング・オフを認めず、相談者がこの条件で合意しました。後日、クレジットカードの請求が取消しされたことを確認し、終了しました。
うまい話はありません!借金だけが残ることも
この他にも「SNS で暗号資産(仮想通貨)の取引や投資等で簡単にもうかると勧誘され、高額な情報商材のマニュアルを契約してしまった」「マッチングアプリで知り合った異性から、投資取引のための自動売買ツールを勧められて契約したが、トラブルになった」などの相談が寄せられています。 「お金がない」と断っても、「毎月のもうけで、すぐに返済できる」「リスクはない」と説明され、次々とクレジットカードを使わせられたり、複数の消費者金融で借り入れする方法を指南されたりして多重債務になってしまったとの相談もあります。事業者が解約や返金に応じなければ、借金だけが残ることになります。
簡単にもうかるといったうまい話はありません。トラブルに遭ったら、速やかに最寄りの消費生活相談窓口に連絡を。