近年の消費者問題は、事業者と消費者との間にある情報の格差から起こる、商品の安全性の問題や契約取引に関する悪質商法の問題に加え、経済情勢の進展に伴う情報化やグローバル化による消費者問題、また、高齢社会の一層の進行からおこる消費者問題など、消費者トラブルは重層化しながら、その内容も複雑化、高度化してきています。こうしたことから消費者が習得すべき消費生活に係わる知識や技能についても、適時・適切に更新が必要となってきています。平成24年12 月に施行した消費者教育の推進に関する法律(以下「推進法」)では、市場の健全化を求め消費者の利益を擁護・増進し、消費者が自主的かつ合理的に行動することができるようその自立を支援するための手段として、消費者教育を位置づけています。また、平成28年3月文部科学省発行の『いつでもどこでもだれでもできる!消費者教育のヒント&事例集』にも詳しく書かれていますので、参考にしてください。
「消費者教育」とは、推進法、第2条第1項では「消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育(消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育を含む)及びこれに準ずる啓発活動をいう。」とあります。
社会の安定と持続可能な社会を確保するためには、政府や事業者のみでは実現が難しく、消費者の自らの意思決定や消費行動がもたらす影響による社会的役割に期待が寄せられています。平成20 年度の『国民生活白書』では、消費者市民社会への転換が提言され、推進法では、消費者教育の定義に、従来の消費者教育に加え市民として社会の形成に参画し消費者が主役となる社会の構築に参画する消費者を育成することを含むとしました。
消費者庁「消費者教育の体系イメージマップ活用ガイド」より
消費者教育ポータルサイト「消費者教育の体系イメージマップ検索」へリンク
小学生期から高校生期における学校での消費者教育は、学習指導要領に則って行われることになりますが、これに加えて、家庭や地域においても適切な消
費者教育の実施が期待されるところです。 次の段階の成人期(特に若者)においては、高校生期までに身につけた基礎 を踏まえつつ、さらに必要な内容について学びを深めることにより、その知識
や技能を自分のものとして活用できるようになることが期待されます。また、 成人期の消費者教育としては、自学自習での取組の場が提供されることも重要 となります。
消費者庁「消費者教育の体系イメージマップ活用ガイド」より
消費者教育の範囲は幅が広く、生活のあらゆる領域に関わります。そして、知識だけではなく実践的な能力が育まれるために、多様な主体が担い手となり、幼児期から高齢期までの各時期に、様々な場で取り組みが行われています。こうした消費者教育をより効果的に行うためには、教育の内容について共通の認識をもち、その上で取り組みを行う各主体間の連携をすすめ、必要な教材や手法の開発を行うことが必要です。そこで、消費者庁では、平成24年9月から12月にかけて消費者教育推進のための体系的プログラム研究会を開催し、平成25年1月22日に「消費者教育の体系イメージマップ〜消費者力ステップアップ〜」を公表しました。
この「消費者教育イメージマップ」は、自立した、消費者市民社会を形成する消費者になるために、どのような時期に、どのような内容を身につけていくことが求められるかを一覧できるものとなっています。
イメージマップでは、生活におけるどのような領域に関することを学びのテーマにするかタテヨコの交わったボックスをみることで、そのヒントが得られるように作られています。
詳しくは消費者庁「消費者教育の体系イメージマップ活用ガイド」をご覧ください。
消費者庁「消費者教育の体系イメージマップ活用ガイド」より
今日の消費行動の複雑化、多様化等を踏まえ、児童生徒が消費者としての自覚をもち、主体的に判断し行動できるようにする観点から、消費者教育に関する内容の充実が図られました。
平成20年3月 小・中学校学習指導要領の改訂
平成21年3月 高等学校学習指導要領の改訂
@ 小学校<文部科学省平成20年3月告示>
(社会科)
(家庭科)
(道徳)
A 中学校<文部科学省平成20年3月告示>
(社会科(公民))
(技術・家庭科)
B高等学校<文部科学省平成21年3月告示>
(公民科)
(家庭科)
北海道教育委員会では、平成23年8月に新学習指導要領に基づき消費者教育推進のため各学校において消費者教育を実施しようとする際に活用していただけるよう「消費者教育〜自立した消費者を育成するために〜」パンフレットを作成しています。
北海道教育委員会「消費者教育〜自立した消費者を育成するために〜」より一部抜粋
上記パンフレットの小学校における消費者教育の事例の「環境」をイメージマップと照合すると、ヨコ軸の「消費者市民社会の構築」の領域→「持続可能な消費の実践」にあたり→タテ軸の「小学生期」を見ると、「自分の生活と身近な環境とのかかわりに気付き、物の使い方などを工夫しよう」ということが身につけさせたい目標としていることがわかります。
このように、イメージマップと実践した取り組みなどを照合することで、消費者教育全体における活動の位置を理解することもできます。
今後、消費者教育を実践する際には、イメージマップを活用した取り組みが望まれます。